従三位とはどんな位階?授与基準や正三位との違い・特権の真相を解説
著名な政治家や文化人、ノーベル賞受賞者などが逝去された際、訃報ニュースの速報テロップや記事の中で「政府は故人に従三位を贈ることを決定した」という一文を目にする機会があります。厳粛な響きを持つ言葉ですが、実際にこれがどれほどの格式を持つ位階なのか、即座に説明できる人は多くありません。
耳慣れない人にとっては「勲章とは何が違うのか」「遺族に賞金や年金のような特権は与えられるのか」といった疑問も浮かぶところです。古代の律令制から形を変えつつ受け継がれてきた日本の栄典制度において、従三位が持つ意味や授与基準、正三位との明確な境界線を解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:従三位(じゅさんみ)は日本の全16階ある位階序列の上から6番目に位置し、現代では主に国務大臣経験者、最高裁判事、顕著な業績を残した学者・文化人らに死後追贈される。
- 要点2:日本国憲法第14条の規定に基づき、叙位に伴う賞金・年金・税制優遇などの実利的な特権は一切存在せず、純粋な名誉的栄典である。
- 要点3:勲章(目に見える記章牌)とは異なり、位階は個人の「品格や功績に対する霊位」を示すもので、各省庁の推薦と閣議決定を経て天皇陛下より下賜される。
【基本解説】従三位の読み方と位階制度におけるランク・位置づけ
まず押さえておきたいのが、従三位の読み方は「じゅさんみ」である点です。古文書や歴史ドラマなどでは「じゅうさんみ」と発音される場面も見られますが、現代の公的呼称および法令用語としては「じゅさんみ」が正式な読み方となります。
日本の位階制度は、上下それぞれに「正(しょう)」と「従(じゅ)」が配され、一位から八位までの合計16段階で構成されています。
【現行の位階制度 ランク一覧】
1. 正一位(しょういちい):生前授与は極めて稀。歴史上でも織田信長や徳川家康などごく少数。
2. 従一位(じゅいちい):内閣総理大臣として極めて卓越した功績を挙げた者など。
3. 正二位(しょうにい):首相経験者や長年国家運営の中枢を担った者。
4. 従二位(じゅにい):首相経験者、衆参両院議長など。
5. 正三位(しょうさんみ):主要閣僚を長年務めた政治家、最高裁判所長官など。
6. 従三位(じゅさんみ):国務大臣経験者、最高裁判所判事、特筆すべき文化勲章受章者など。
7. 正四位(しょうしい)〜 従八位(じゅはちい):副大臣、政務官、官僚、地方自治体の首長、一般功労者など。
古代の律令制において、三位以上は「公卿(くぎょう・上達部)」と呼ばれ、政治の最高決定権を持つ真の特権貴族階級でした。四位や五位の官人が昇殿を許される「殿上人」であったのに対し、三位以上は宮廷政治を動かす頂点に君臨していました。従三位はまさに「貴族とそれ以外の官人を分ける決定的な境界線」であり、その特別な格の高さは現代の叙位運用にも色濃く反映されています。
【基準と対象】従三位はどんな人に贈られる?現代の叙位基準と歴代受章者
現代の日本において、従三位は「国家または公共に対して顕著な功績を挙げた人物」に対して授与されます。内閣府賞勲局が定める叙位基準に基づき、厳格なキャリア審査を経て決定される仕組みです。
具体的にどのような職歴や実績を持つ人物が対象となるのか、主な基準は以下の通りです。
・政治分野:国務大臣(閣僚)を複数回または重要ポストで務めた政治家、衆議院・参議院の副議長経験者など
・司法・行政分野:最高裁判所判事、検事総長、会計検査院長、事務次官を複数期務めた高級官僚など
・学術・文化分野:文化勲章受章者、日本学士院会員、ノーベル賞受賞者、学術界で世界的な功績を残した大学名誉教授など
・経済分野:経済団体のトップ(経団連会長など)を務め、日本経済の発展に決定的な寄与をした実業家
ニュースで話題になる歴代の有名人・受章者としては、各省庁の大臣を務めた政治家の逝去時に贈られるケースが最も一般的です。また、文化勲章を受章している世界的学者や芸術家が亡くなった際にも従三位が追贈される事例が多く見られます。
なお、歴代首相のケースでは、総理大臣を務めた人物は一般的に「正二位」や「従二位」、短命内閣や特異な政治状況下であっても「正三位」以上に叙される運用が定着しています。そのため、従三位は「首相経験者の一歩手前で、国家の中枢を支え切った大物政治家や最高裁判事の標準的な最高到達点」と位置づけられています。
【徹底比較】「正三位」と「従三位」の違い|分かれ目となる功績の格差
位階制度において、隣り合う「正三位(しょうさんみ)」と「従三位(じゅさんみ)」には、一般には見えにくい明確な序列の壁が存在します。漢字の通り、「正」が上位で「従」がそれに次ぐ階位です。
両者の具体的な違いを分けるのは、主に「就任していた公職の格」と「在任期間・職務の重み」です。
【正三位と従三位の主な違い】
・正三位の対象:内閣総理大臣(比較的短期の在任者など)、衆議院議長・参議院議長(三権の長)、最高裁判所長官、長年にわたり主要閣僚を歴任し卓越した功績を残した政治家。
・従三位の対象:国務大臣経験者、衆参両院の副議長、最高裁判所判事、文化勲章受章者、事務次官経験者など。
三権の長(総理大臣、衆参両院議長、最高裁長官)を務めたか、あるいはそれに準ずる閣僚・判事・副議長クラスであったかという点が、正三位と従三位を分ける大きな境界線となっています。
【真相追及】賞金や特権はあるのか?「勲章」と「位階」の決定的な違い
栄典が授与される際、多くの人が抱く「遺族に多額の賞金が出るのではないか」「子孫に税制上の優遇があるのではないか」という疑問ですが、真相は「金銭的・物質的な特権は1円たりとも存在しない」というのが法的な事実です。
日本国憲法第14条第3項には、以下のように明記されています。
「栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の代に限り、その効力を有する。」
戦前の大日本帝国憲法下では、高位の位階を持つ貴族には華族制度を通じた政治特権や年金制度(金禄)が存在していました。しかし、日本国憲法の施行に伴いこれらは完全撤廃され、現在では純粋な「国家からの名誉称号」に限定されています。
また、「勲章」と「位階」の混同も多く見られますが、両者には明確な役割の違いがあります。
・勲章(叙勲):「旭日大綬章」や「瑞宝重光章」など、生前または死後にその功績を称えて授与される「目に見える記章(メダル)」。
・位階(叙位):個人の生涯を通じた品格や功績を総合評価し、霊魂に捧げられる「格式・地位の格付け(位記という和紙の証書が交付される)」。
1964年(昭和39年)に生存者叙勲が再開されて以降、勲章は生前にも授与される一方、位階は皇族などを除き「死没時に生涯の功を総括して追贈される(死後叙位)」という運用が基本となっています。
【手続きの裏側】叙位叙勲はどう決まる?閣議決定から発令までの経緯
故人が亡くなってから、ニュースで「従三位に叙された」と報じられるまでには、行政機関による迅速かつ厳格な手続きが行われています。
叙位叙勲の手続きは、以下のようなステップで進められます。
1. 省庁からの推薦:故人が所属していた官庁(元議員であれば総務省・内閣官房、学者であれば文部科学省など)が、過去の功績や役職履歴を取りまとめて推薦書類を作成。
2. 内閣府賞勲局の審査:過去の叙位基準・前例と照らし合わせ、位階の等級(正三位、従三位など)が妥当であるかを精密に審査。
3. 閣議決定:毎週火曜・金曜などに開催される閣議において、全閣僚の合意により正式決定。
4. 天皇陛下の裁可・発令:内閣総理大臣が天皇陛下に上奏し、御名御璽(天皇陛下の署名と印)を賜ることで正式に効力が発生。
5. 官報掲載と位記授与:政府の機関紙である『官報』に叙位の事実が公示され、遺族に対して「位記(いき)」と呼ばれる公式文書が伝達される。
これらの一連のプロセスは、故人の死没日から遡って適用される形で極めてスピーディーに処理されます。
【従三位とは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:一般人が生きているうちに従三位をもらうことは可能ですか?
A1:不可能です。現在の制度運用では、位階は原則として死没者のみに贈られる「死後叙位」となっています。生前に授与される栄典は「勲章」や「褒章」であり、位階が生前に授与されることは皇族など極めて特殊な例外を除きありません。
Q2:遺族が従三位の叙位を辞退することはできますか?
A2:可能です。栄典は国家からの名誉の授与ですが、故人の生前の遺志や遺族の思想信条などの理由により、受章を辞退する権利が認められています。過去にも政治家や文化人の遺族が叙位叙勲を辞退した事例は存在します。
Q3:歴史上で従三位として有名な人物には誰がいますか?
A3:平安時代や鎌倉時代の貴族・武将に多数存在します。例えば、平清盛の嫡男である平重盛や、室町幕府の有力守護大名などが従三位に昇叙しています。また、公卿になれるかどうかの境界であったため、歴史上多くの武将が「従三位への昇進」を悲願として目指しました。
まとめ:受け継がれる栄典制度と現代における従三位の真価
従三位という言葉は、一見すると前時代的な響きを帯びていますが、実態は国家運営や社会発展に命を捧げた人物に対し、国が最大の敬意を込めて捧げる最高峰の名誉栄典です。
金銭や特権といった物質的報酬を一切伴わないからこそ、純粋に故人の生涯の歩みと功績そのものを称える証として機能しています。今後、ニュースなどで「従三位」という文字を目にした際は、その人物が日本の社会機構においていかに重い職責を果たしてきたのかという背景に注目してみると、報道の深みがより一層理解できるはずです。 (出典: 従 三 位 と は(Yahoo!ニュース))